▶ ツールはこちら: 指値シミュレーター
1. 目的と位置づけ
「発掘(watch list scanner)→ 評価(v2.3スコア/Phase 2調査)→ 追跡(寄与度履歴)→ リスク管理(寄与ボラティリティ)」と構築してきた運用システムの最終ピースとして、「いくらで発注するか」という実行判断を支援するツール。
単一の「正解価格」を出すのではなく、根拠の異なる複数の目安と到達可能性を提示し、選択は利用者に委ねることを基本姿勢とする。
2. 中核設計: アンカー方式
単一ロジックへの依存を避け、性質の異なる複数の「価格アンカー」を統合する。
| アンカー | 買い | 売り | 性質 |
|---|---|---|---|
| DYアンカー | 配当 ÷ 目標利回り(0.25%刻み切上げ) | 不使用 | 配当投資の本質価値 |
| σアンカー | 現値 × (1 − 1.5σ) | 現値 × (1 + 1.5σ) | 統計的に到達しうる変動幅 |
| レンジアンカー | 半年終値の下位25% | 上位25% | 実際に付いた価格帯の担保 |
| Phase 2アンカー | 詳細調査の目標値(非公開・自分用のみ) | — | 人間の定性判断 |
統合は max/median/min 方式:
- 積極 = 現値 ± 0.5σ(ほぼ確実に約定させたい水準)
- 標準 = アンカー群の中央値(外れ値に頑健)
- 忍耐 = 最も保守的なアンカー(良い価格を待つ)
この方式はアンカーの本数が増減しても機能し、1つのアンカーが極端でも標準値が歪まない。売りでDYアンカーを使わないのは、「利回り低下で売る」が戦略依存であり万人に意味が通じないため。統計的な高値圏の提示に徹する。
3. ボラティリティ推定の精度思想
指値と確率の品質はσの品質で決まるため、単純な過去標準偏差を避け、以下のハイブリッドを採用。
- EWMA(λ=0.94、日次リターン130営業日): 直近の変動を重視し、古いイベントの影響を自然減衰させる。サンプル26点(週次)→130点(日次)で推定誤差を大幅削減
- Parkinson推定(High/Low): 指値は「ザラ場のヒゲに触れれば約定する」ため、終値だけでなく日中値幅の情報を取り込む
- 両者の分散平均をハイブリッドσとして使用
あえて入れないもの: ドリフト項(短期の期待リターン推定は誤差が大きく、誤ったドリフトはゼロ近似より有害)、ファットテール分布(複雑さに見合う実益が薄く、実測補正で吸収する方針)。
4. 到達確率: バリア方式と検証主義
確率は終値ベースではなく、期間中に一度でも触れる確率(ドリフトなしブラウン運動の反射原理、20営業日)で計算。指値運用の実態に合致させる。
さらに重要なのは実測検証の仕組みを最初から組み込んだこと。毎日「予測した確率」を記録し、20営業日後に「実際に到達したか」を判定、確率帯ごとの実現率を集計する。理論モデルの仮定を積み上げるより、実測でキャリブレーションすることを精度の最終保証とする。
5. 安定性への配慮
日次更新の公開ツールでは「昨日と今日で目安が大きく違う」ことが信頼を損なう。実運用で発見した境界問題(DY刻み境界近傍の銘柄で目標DYが日替わりで往復し、アンカーが±100円以上振れる。全体の約15%が該当)に対し、目標DYの判定のみ5日平均終値ベースとする修正を実施。「ノイズには不動、トレンドには追随」を設計原則とする。
6. アーキテクチャ: 週次思想の日次化
- 日付指定の一括取得により、全銘柄更新をAPI 1回/日で実現(銘柄ループ取得なら1,600回超のところを)
- OHLCキャッシュ(140営業日ローリング)+ 純計算15秒の軽量バッチ
- 静的JSON(public配下)をクライアントが検索する構成で、サーバー・APIキー露出・リアルタイム負荷をすべて排除
- 毎営業日19:00に自動実行 → ブログへpush → CDN配信
対象は「東証プライム・スタンダードの有配当事業会社 約1,600銘柄」。これはv2.3スコアリングと同一の対象定義であり、評価軸が有効に機能する範囲に絞るという一貫した設計判断。
7. 人間判断との関係
Phase 2詳細調査の目標値は計算で上書きせず、アンカーの一つとして尊重する(公開ツールには含めず、自分用の週次メールのみ)。本ツールはあくまで統計的な参考値の機械的提示であり、投資助言ではない。最終判断は定性調査と統合して人間が行う——自動スコアと詳細調査の関係と同じ構造を、実行支援でも維持する。
8. 設計原則の要約
- 単一の正解ではなく、根拠の異なる複数の目安(アンカー方式)
- 統計は実態に合わせる(ヒゲで約定するならHigh/Lowとバリア確率で測る)
- 推定できないものは推定しない(ドリフト排除、実測補正で代替)
- 予測は記録し、検証する(キャリブレーション前提の運用)
- 日次更新でも目安は安定させる(平滑化による閾値バタつき防止)
- 既存アーキテクチャと思想の一貫性(対象銘柄・週次/日次サイクル・静的配信)
- 機械は目安、判断は人間(Phase 2判断の尊重、免責の明示)