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指値シミュレーターの設計思想

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1. 目的と位置づけ

「発掘(watch list scanner)→ 評価(v2.3スコア/Phase 2調査)→ 追跡(寄与度履歴)→ リスク管理(寄与ボラティリティ)」と構築してきた運用システムの最終ピースとして、「いくらで発注するか」という実行判断を支援するツール。

単一の「正解価格」を出すのではなく、根拠の異なる複数の目安と到達可能性を提示し、選択は利用者に委ねることを基本姿勢とする。

2. 中核設計: アンカー方式

単一ロジックへの依存を避け、性質の異なる複数の「価格アンカー」を統合する。

アンカー買い売り性質
DYアンカー配当 ÷ 目標利回り(0.25%刻み切上げ)不使用配当投資の本質価値
σアンカー現値 × (1 − 1.5σ)現値 × (1 + 1.5σ)統計的に到達しうる変動幅
レンジアンカー半年終値の下位25%上位25%実際に付いた価格帯の担保
Phase 2アンカー詳細調査の目標値(非公開・自分用のみ)人間の定性判断

統合は max/median/min 方式:

  • 積極 = 現値 ± 0.5σ(ほぼ確実に約定させたい水準)
  • 標準 = アンカー群の中央値(外れ値に頑健)
  • 忍耐 = 最も保守的なアンカー(良い価格を待つ)

この方式はアンカーの本数が増減しても機能し、1つのアンカーが極端でも標準値が歪まない。売りでDYアンカーを使わないのは、「利回り低下で売る」が戦略依存であり万人に意味が通じないため。統計的な高値圏の提示に徹する。

3. ボラティリティ推定の精度思想

指値と確率の品質はσの品質で決まるため、単純な過去標準偏差を避け、以下のハイブリッドを採用。

  • EWMA(λ=0.94、日次リターン130営業日): 直近の変動を重視し、古いイベントの影響を自然減衰させる。サンプル26点(週次)→130点(日次)で推定誤差を大幅削減
  • Parkinson推定(High/Low): 指値は「ザラ場のヒゲに触れれば約定する」ため、終値だけでなく日中値幅の情報を取り込む
  • 両者の分散平均をハイブリッドσとして使用

あえて入れないもの: ドリフト項(短期の期待リターン推定は誤差が大きく、誤ったドリフトはゼロ近似より有害)、ファットテール分布(複雑さに見合う実益が薄く、実測補正で吸収する方針)。

4. 到達確率: バリア方式と検証主義

確率は終値ベースではなく、期間中に一度でも触れる確率(ドリフトなしブラウン運動の反射原理、20営業日)で計算。指値運用の実態に合致させる。

さらに重要なのは実測検証の仕組みを最初から組み込んだこと。毎日「予測した確率」を記録し、20営業日後に「実際に到達したか」を判定、確率帯ごとの実現率を集計する。理論モデルの仮定を積み上げるより、実測でキャリブレーションすることを精度の最終保証とする。

5. 安定性への配慮

日次更新の公開ツールでは「昨日と今日で目安が大きく違う」ことが信頼を損なう。実運用で発見した境界問題(DY刻み境界近傍の銘柄で目標DYが日替わりで往復し、アンカーが±100円以上振れる。全体の約15%が該当)に対し、目標DYの判定のみ5日平均終値ベースとする修正を実施。「ノイズには不動、トレンドには追随」を設計原則とする。

6. アーキテクチャ: 週次思想の日次化

  • 日付指定の一括取得により、全銘柄更新をAPI 1回/日で実現(銘柄ループ取得なら1,600回超のところを)
  • OHLCキャッシュ(140営業日ローリング)+ 純計算15秒の軽量バッチ
  • 静的JSON(public配下)をクライアントが検索する構成で、サーバー・APIキー露出・リアルタイム負荷をすべて排除
  • 毎営業日19:00に自動実行 → ブログへpush → CDN配信

対象は「東証プライム・スタンダードの有配当事業会社 約1,600銘柄」。これはv2.3スコアリングと同一の対象定義であり、評価軸が有効に機能する範囲に絞るという一貫した設計判断。

7. 人間判断との関係

Phase 2詳細調査の目標値は計算で上書きせず、アンカーの一つとして尊重する(公開ツールには含めず、自分用の週次メールのみ)。本ツールはあくまで統計的な参考値の機械的提示であり、投資助言ではない。最終判断は定性調査と統合して人間が行う——自動スコアと詳細調査の関係と同じ構造を、実行支援でも維持する。

8. 設計原則の要約

  1. 単一の正解ではなく、根拠の異なる複数の目安(アンカー方式)
  2. 統計は実態に合わせる(ヒゲで約定するならHigh/Lowとバリア確率で測る)
  3. 推定できないものは推定しない(ドリフト排除、実測補正で代替)
  4. 予測は記録し、検証する(キャリブレーション前提の運用)
  5. 日次更新でも目安は安定させる(平滑化による閾値バタつき防止)
  6. 既存アーキテクチャと思想の一貫性(対象銘柄・週次/日次サイクル・静的配信)
  7. 機械は目安、判断は人間(Phase 2判断の尊重、免責の明示)
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